幅広い選択肢の提供

外国人でもキャリアを広げられる。
日本で挑戦し、BIMマネージャーを目指す

日本で広がったキャリアの選択肢

私はベトナムの大学で電気を専攻し、建築設備のBIM(Building Information Modeling)を学びました。BIMとは、従来の平面的なCAD図面とは異なり、建物の設計から施工、維持管理までを3次元データで一元管理する仕組みです。CADが「図面を描く」ツールであるのに対し、BIMは建物の情報を立体的に管理し、設計変更が全体に自動反映される先進的な手法です。大学時代から日本企業とリモートでやり取りしながらRevit(BIM専用の設計ソフトウェア)を使ってモデリングを行っていました。子どもの頃から日本の漫画や音楽が好きで、日本語にも自然と興味を持ちました。

来日後は、建設会社でのインターンシップから大手ゼネコン、さらには薬局でのマーケティング職まで、建設業界を超えた様々な職種を経験しました。しかし将来を考えたとき、「やはり一番自信があり、専門性を活かせるBIMに戻ろう」と決意しました。
ウィルオブ・コンストラクションとの出会いは、転職活動中のことでした。他の企業は年末年始の時期で対応が遅れがちな中、ここだけは迅速に連絡をくれて、面接から内定まで2日という驚異的なスピードで進みました。「自分のキャリアを本気で考えてくれている」と感じられたことが、最終的な決め手となりました。この迅速で丁寧な対応は、外国人材にとって特に重要な要素です。言葉や文化の違いがある中で、誠実に向き合ってくれる会社があることは、挑戦への大きな支えになります。

できなかったことができるようになる喜び

派遣先企業では、外国人社員として初めて配属されることになりました。最初は言語面での不安がありましたが、ウィルオブ・コンストラクションのサポートと現場の先輩方の指導により、設備の3次元モデリングや給排水・空調換気の施工図作成など、新しい技術領域に挑戦することができました。

特に画期的だったのは、BIMを活用した実務での経験です。大学時代に学んだRevitの知識を、日本の現場で実際の建設プロジェクトに適用することで、理論と実践を結び付けることができました。施工図では、設計図をもとに実際の工事に必要な寸法や取り付け位置を詳細に描きますが、BIMの3次元データを活用することで、従来では発見しにくかった配管同士の干渉なども事前に把握できるようになります。最初は図面の意味すら分からず悩みましたが、自分で一つの施工図を完成させられた時、「やっと仲間に追いつけた」という実感があり、大きな自信になりました。

私の働きぶりが評価され、派遣先企業から「彼がいるなら、他の外国人も採用したい」という声をいただけました。これは単なる個人の成功を超え、外国人材全体の可能性を広げる組織変革につながりました。現在では、私が先駆者となったことで、ミャンマー、中国、インドネシアなど様々な国籍の仲間が活躍しています。私は彼らのサポートを行いながら、自身も専門技術者として施工図作成やBIMモデリングなどの実務を担当し、チームの技術力向上と一体感醸成に貢献しています。
そして今回、この働きぶりを評価していただき、ウィルオブ・コンストラクション社内でMVTアワード(Most Valuable Technician Award=最優秀技術者賞)を受賞しました。受賞の連絡を受けた時は、正直すごく驚きました。まだ1年しか経っていないのに、こんな評価をもらえるなんて思っていなかったからです。この賞は全国で働く技術社員の中から、期間中最も活躍した人材を表彰する制度で、外国人材として初の受賞でした。国籍に関係なく実力と貢献度を評価してもらえたことは、本当に嬉しく、やりがいを感じています。

未来を切り拓く幅広いキャリア

日本の建設業界では、BIMの普及が他国と比較して遅れているのが現状です。しかし私が派遣されている企業は設備系BIMの先進的な取り組みを行っており、私も最前線でその技術革新に携わっています。最近では業界の勉強会に企業代表として参加させていただくなど、個人の成長を超えて業界全体への貢献も視野に入れた活動ができるようになりました。

振り返ると、私のキャリアは「選択肢の連続」でした。建設からマーケティングへ、そして再び専門分野への回帰。ウィルオブ・コンストラクションは、こうした多様な経験を否定するのではなく、むしろ価値として評価してくれました。異業種での経験が、現在のBIM業務でのコミュニケーション力や多角的な視点につながっているからです。
外国人材の活躍は、人材不足に悩む建設業界にとって重要な解決策の一つです。私たちのような技術者が実績を積むことで、業界全体が外国人材の可能性を再認識し、より積極的な受け入れ体制を構築するきっかけになります。これは単なる労働力の確保ではなく、多様な視点や技術を取り入れた業界の発展につながります。外国人材にとって、日本でのキャリア形成は挑戦の連続です。しかし適切なサポートと評価体系があれば、その挑戦は必ず実を結びます。私の事例が示すように、一人の成功が組織全体の多様性推進につながり、さらには業界全体の技術革新や人材確保に貢献することも可能です。
現在の目標は、BIMマネージャーになることです。BIMマネージャーは単に図面を描く技術者ではなく、プロジェクト全体を俯瞰し、チームを統率し、メンバーの疑問に答えながら品質向上を図る重要な役割です。具体的には、若手や外国籍の仲間からの相談に応じて指導したり、図面の整合性や品質を最終的に確認したりする責任を担います。単なる技術者ではなく、チーム全体を支える存在になることが求められています。技術的な専門性に加えて、マネジメント能力やコミュニケーション力が求められる挑戦的なポジションです。
さらに長期的な夢として、母国ベトナムに日本語と建築技術を学べるスクールを設立したいと考えています。私自身が来日当初に経験した言語や文化の壁、技術基準の違いなどを踏まえ、事前にこれらを学べる環境を整備することで、次世代の人材がよりスムーズに日本で活躍できるようサポートしたいのです。
この構想は、私自身が日本で経験した多様なキャリアの可能性を、国境を越えて次世代に繋げていくことを意味します。私が日本で得た知識と経験を母国に還元し、さらに多くの人材が日本と母国の架け橋となれる道筋を作りたいと思います。

ホーム ナビOFF