社外取締役鼎談ていだん

  • 社外取締役(独立役員)
    池側 千絵
    いけがわ ちえ

    P&Gジャパン合同会社のファイナンス部門へ入社、以降複数の米国先進企業の日本子会社でCFOを務め、グローバル経営管理、経営企画、事業企画・事業管理、経理財務税務などに従事。現在は日本企業の経営管理体制の強化支援アドバイザリーや慶應義塾大学大学院経営管理研究科の非常勤講師も務める。2020年6月より当社社外取締役就任。

  • 社外取締役(独立役員)
    腰塚 國博
    こしづか くにひろ

    コニカミノルタ株式会社で取締役兼CTOを務め、DX推進や新規事業創出、海外の大型M&A、MOT、経営戦略策定などに従事。2019年の役員定年後も同社において上級技術顧問や産学官AI開発プロジェクトの理事長・オーナーを務めるなど、技術戦略の策定や推進に貢献。2022年6月より当社社外取締役就任。

  • 社外取締役(独立役員)
    高橋 理人
    たかはし まさと

    株式会社リクルートホールディングスで、インターネット部署の立ち上げ責任者を務め、「情報と人との関わり」に従事。2007年以降は楽天株式会社で、基幹事業であるEC事業やその周辺事業の責任者・常務執行役員として事業開発やDXを推進し、企業の大きな成長に貢献。2022年6月より当社社外取締役就任。

ウィルグループは今後のダイナミックな取り組みに向けて、2023年6月、角裕一が新社長に就任したのをはじめ、経営陣および社内体制の若返りを図りました。もっとも企業経営は若い力だけで行うものではなく、知見や経験に富む社外取締役の客観的な視点からの監督や助言・提言も不可欠です。本鼎談では、当社のコーポレート・ガバナンスおよびサステナビリティ経営をテーマに、3名の社外取締役が語り合います。

社外取締役の立場から貢献できること

  • 2020年に社外取締役に就任しました。それまでは、グローバル企業の日本子会社のCFOやFP&A(経営企画・事業管理担当者)として長年勤務してきました。当社は現在、売上収益1,439億円のうち海外売上比率が約4割を占め、グローバル企業として事業を行う段階に来ています。そのためには本社による経営管理体制を強化して全世界の企業運営を統括し、子会社に経営資源を最適配分し、企業価値の向上を目指していかなければなりません。私の知見や経験をこのようなフェーズで活かしていきたいと思っています。また、当社では女性管理職の登用を増やしていますが、私も子育てと仕事を両立してきたので、さらに女性活躍が進むように支援しながら、多様性を推進していきたいと考えています。

池側 千絵
  • 私はコニカミノルタ株式会社の取締役兼CTOなどを経験してきました。一般的に、ガバナンスには執行責任者を監督し、公平性・合理性・透明性を確保する「守り」のガバナンスと、持続的成長と企業価値向上を図る「攻め」のガバナンスがあります。企業にはこの両方が求められますが、私は「攻め」のガバナンスをより得意としています。変革の時代に会社がどう適合して進化していくか。これまでの経験と専門性を活かして貢献していきたいですね。同時に、会社が重視している人的資本経営にも寄与していく考えです。
  • 私は株式会社リクルート(現 株式会社リクルートホールディングス)に25年間ほど勤め、事業再構築や新規事業の立ち上げなどを経験してきました。その後、入社した楽天株式会社(現 楽天グループ株式会社)ではEコマースの普及やマーケットの創出など、世の中にない価値を創造しながら、チャレンジャーとしての企業の進化の過程を体現してきました。これらの知見や視点は、当社の中長期的な企業価値の向上に貢献するものと考えています。当社社名の「WILL」には、Working(働く)、Interesting(遊ぶ)、Learning(学ぶ)、Living(暮らす)の意味があり、それぞれの事業領域でサービスを提供し、ナンバーワン企業を目指しています。現在はWorking(国内・海外)事業を主に展開していますが、これからはInteresting、Learning、Livingの事業領域も成長させていきます。ここでも私の経験が活かせるはずです。

ウィルグループのガバナンス体制

  • 近年ではコーポレート・ガバナンスに関する原則の整備が進んでおり、企業の体制整備も急速に進んでいます。東証プライム市場で事業を展開する当社も、ガバナンス体制の強化を図っています。その要となる取締役会は、2022年に腰塚さんと高橋さんが新たに社外取締役に就任されたことで、事業戦略の実現や株価向上に向けた議論が活発化しています。
  • 当社の取締役会はフランクで、会社のオープンな社風を反映していますね。とりわけ、短期的な経営戦略の実現に向けた、努力を惜しまない真摯な姿勢には頭が下がります。一方で、中長期の経営戦略をどう具体化し実現していくか、この議論を取締役会で活性化させていくことが今後のテーマだと捉えています。ただ、2023年4月から新たに始まった「中期経営計画(WILL-being 2026)」は、社長をはじめとする執行側から長い時間をかけて説明いただいたことで、取締役会では私たちも積極的に意見を述べることができました。取締役会での位置づけがアドバイザリーボード(主に助言を行う)からモニタリングボード(主に監督を行う)に代わったので、社外取締役の立場から議論を深めていきたいと思います。
高橋 理人
  • そうですね。「WILL-being 2026」はたくさん議論して、前中期経営計画と比べてもより磨かれ、よりわかりやすくなった印象があります。腰塚さんが言われたように、次は戦略を立案するだけでなく、いかに実践し、新しい状況に臨機応変に対応していくか。これを社外取締役の私たちがチェックしていきます。当社は社外取締役に対して、会社が今、何をやっているか理解を深めるための多くの機会を提供してくれます。そして、そこに積極的な参加を促すガバナンス体制があります。会社を理解するには、外側から眺めるだけではなく、内側に入って見ることが有効です。私は経営幹部の皆さんと早い段階で1on1ミーティングを行う機会があり、それぞれが考える経営に触れることができました。

  • 昨今のコーポレート・ガバナンスにおいては、社外取締役に求められるものが進化しています。以前は外部の弁護士や会計士の先生から専門的な意見を求めることが多かったのですが、現在は中長期戦略をともに考え、企業価値を高めることに貢献していくことが期待されています。当社でも、そうしたコーポレート・ガバナンス体制を実施できるようになっています。

サクセッションプランと人材育成

  • ウィルグループの良さは社員が会社を大好きでいて、会社の成長と個人の成長が一体化しているところです。前経営陣は業績を上げていましたが、早めに若い世代にバトンタッチしたいと、時間をかけて次の社長と取締役の選抜を行いました。選考プロセスでは、会社に長く勤続し、互いを理解し合っている関係性の中から選ぶのではなく、社外取締役や外部のコンサルタントも加えて客観的な視点から選んでいます。私たちも人事本部長のリードのもと、選考プロセスに適宜参加して、定量的かつ定性的に評価・判断してきました。指名委員会において、社外役員の意見も取り入れながら、最終的に選ばれたのが現社長でした。就任後には、角さんが新社長として会社をリードする姿を「WILLサミット」(部長以上の幹部を対象に年2回行う勉強会)や、4年ぶりにリアル開催した「グループキックオフ」で確認しながら、誰もが納得できる人選ができたと感じています。
  • 池側さんが言われるように、前経営陣はこの段階でよく交代しました。「組織の若返りを図る」というのは、言葉にすると簡単ですが、実際に実践できる会社は少ないものです。当社の経営幹部は15人弱おり、全員がオーナーシップを持ってVISIONとともに成長しています。その意味で、良い人材が揃っており、その中から新社長に角を選んだのは見る目がある会社だと思います。ただし、若い経営幹部が多いだけに、視座が成長し切れてないところがあります。そこは私の役割として、各人と直接話をしながら本人に気づいてもらう取り組みをしています。例えば、経営幹部とその1つ下の層です。「あなたが右腕にしている人たちは、あなたに近い視座で仕事が出来ていますか」と聞いて、「下は弱い」と答える人には、「あなたが会社に、視座を高めてもらい、モチベートされたのと同様のことを下に伝承してください」と話をしています。これは経営幹部やその下の層の成長の伸びしろなので、期待したいところです。現在、当社は成長が鈍化する成熟フェーズにあるので、若手人材の成長を強く支援しながら、事業の持続的成長を担保する、2段ロケット方式で前進しようとしている状況です。

腰塚 國博
  • 当社はHR分野で事業を展開している企業だけに、人材を一番大切にしています。新社長の選考プロセスも、HR分野ではほかにはないほど理想を追い求め、それを体現した結果です。そうでなければ、客観的な基準で納得度の高いプロセスを踏みながら、2年間もかけて選考しません。新社長だけでなく、周りの若返った経営陣も一人ひとりが責任感とオーナーシップを持ち、自分事として経営に携わろうとしています。これが大事で、今後は自らの領域を超えた議論ができるかどうか。当社の共通認識をどう醸成して、もう一段高い視座に全員が立てるかどうか。これらが今後、乗り越えるべき課題です。この視座を高める仕掛けは、経営幹部やマネージャーをはじめ、全社員に対して常に行っています。私も35年間勤め人を続けてきて、大企業からベンチャー、スタートアップまで約100社と付き合いましたが、その中でも当社はユニークですね。若い経営幹部も含めて、打てば響くので教えがいがあり、期待値も上がります。当社のMISSION「個と組織をポジティブに変革するチェンジエージェント・グループ」を体現する会社になれるかどうかに注目しています。
  • 当社は新卒や中途にかかわらず社員のロイヤルティが高く、会社の成長とともに個人も成長しながら一丸となって働いていますね。先ほどグローバル企業としてのこれからに触れましたが、海外の子会社のリーダーたちは会社への忠誠心に加えて、個人としていかに伸びていくかに強い関心を持っています。日本企業には日本企業の良いところがあるので、今後は海外のリーダーたちを日本に招いて交流を図り、国内外の文化を掛け合わせて会社を一層伸ばしていきたいですね。

株主・投資家の皆さまへのメッセージ

  • 我々3人は、ほかでは社外役員やコンサルタント・アドバイザーとして成熟した大企業と関わることも多いです。一方、当社はこれからまだまだ成長する会社なので、社内の取締役を含め社員たちが皆、オーナーシップを持って目標達成に取り組んでいる姿を大きな期待をもって見守っています。これからもこの姿勢を持ち続け、ベンチャー企業のように大きく成長して世界を目指してほしい。当社は、それが可能な会社です。企業価値を向上するエネルギーにあふれていますから、ぜひここに期待していただきたい。
  • 当社は、世の中にポジティブな影響を与えることに真正面から真摯に取り組む会社です。社会人経験の浅い人たちに惜しみなく教育を施し、その人たちが精神的安定を勝ち取りながら社会に出ていく、スペシャリストになっていく、そこまでを会社としてサポートしています。MISSION・VISION・VALUEが全社に浸透しており、世の中のニーズもよく理解している、パーパス経営を実践している会社です。そのことは投資家や株主の皆さまにも正しくご理解いただけるよう、アピールしていきます。
  • 今回若返った新経営陣には、ダイナミックな取り組みを通じた成長を望んでいます。ここは、株主の皆さまの期待も大いに感じる部分です。当社は物事を真正面から捉え、しっかりと議論をしながら進めていく会社です。人材業界の覇者となるべく、これからも大胆かつ革新的な取り組みに挑戦してほしいと思います。社外取締役の私たちは、手厳しいことも言う一番の応援団として経営陣を見守り、そしてサポートしていきます。株主・投資家の皆さまにはぜひ、当社がさまざまなチャレンジをしていく姿を短期的ではなく中長期的な視点から企業価値の向上に注目していただければ幸いです。