WILL GROUP

対処すべき課題・事業等のリスク

対処すべき課題

今後の見通しについては、欧米を中心とした金融不安や景気後退懸念、物価上昇等先行き不透明な状況ではあるものの、ウィズコロナの下で経済活動は新型コロナウイルス感染症拡大前の水準まで再開されており、国内及び当社が海外で主に事業展開を行っているシンガポール、オーストラリアにおいては、人材需要は堅調に推移すると見込んでいます。このような経営環境の下、当社グループの持続的な成長の実現に向けて、2026年3月期を最終年度とする中期経営計画「WILL-being 2026」(以下、「本中計」といいます。)を策定しました。現状・今後の経営環境を踏まえ、以下、当社グループが中長期観点から対処すべき課題を記載します。

1.国内Working事業の再成長

新型コロナウイルス感染症が拡大した2020年以降、成長が停滞している国内Working事業の再成長がグループの持続的成長に向けて、最重要課題となります。そのため、以下の3点に取り組みます。

①建設技術者領域の更なる拡大及び利益創出を実現

建設技術者領域は、年間採用人数を本中計期間で倍増し、2025年3月期に黒字化、2026年3月期に事業の柱の1つにしていきます。

②国内Working事業(建設技術者領域除く)の再成長

外国人管理受託、正社員派遣の拡大に取り組みます。外国人管理受託の拡大は、営業人員の増員により新規オーダー獲得を強化するとともに、現地での採用については、現地の法人、学校等のアライアンスを強化します。正社員派遣の拡大は、建設技術者、セールスアウトソーシング領域で培った採用ノウハウを、ファクトリーアウトソーシング領域にも展開していきます。

③M&Aを通じた非連続な成長

新型コロナウイルス感染症が拡大した2020年以降、成長が停滞している国内Working事業の再成長がグループの持続的成長に向けて、最重要課題となります。そのため、以下の3点に取り組みます。

2.海外Working事業の安定した成長

シンガポール、オーストラリアともポストコロナの急激な人材需要は一巡したものの、両国とも求人件数は高い水準を維持していることから、人材需要は堅調に推移する見通しです。コンサルタント人員増員等を行いながら、人材紹介売上の拡大に取り組むとともに、ダウンサイドリスクを抑え、事業の安定性を高めるために、行政等の安定した領域における人材派遣売上の増加、コスト削減、ガバナンスの強化に取り組みます。

3.人材の確保と育成

人材の確保は当社グループの成長の礎であり、競争上の優位性、持続的な成長を実現するためには、スタッフの採用と育成と定着が重要な課題です。
採用活動においては、2019年10月に主要子会社のサービスブランドを「WILLOF(ウィルオブ)」に統一しました。その後新型コロナウイルス感染症が拡大したことで、ブランドプロモーションの実施を見送ってきましたが、2024年3月期より段階的にプロモーション活動を実施します。これにより、当社グループ全体の認知度及び採用力向上に取り組み、採用力を強固なものにしていきます。
育成、定着においては、就業先での必要なスキルやマインドを取り込んだ就業前、就業期間中における研修を更に充実させ、就業しているスタッフに対する定期的なフォローアップを行っていくことで定着率を高めていきます。

4.サステナビリティの強化

当社グループは、サステナビリティ方針に基づき、社会と企業の持続可能な発展に貢献できるよう以下の取り組みを行っています。

①環境への取り組み

災害に対するレジリエンスの強化を図るとともに、気候変動については環境方針を定め、脱炭素社会実現に貢献する取り組みを進めています。また、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言に賛同表明するとともに、2023年1月にTCFDコンソーシアムに加入し、TCFDの枠組みに基づく気候関連の情報開示を行っています。

②社会への取り組み

当社グループが持続的な成長を遂げていくためには、画一的な視点に捉われず、多様な人材の活躍が必要不可欠であると考えています。性別・年齢・国籍・障がいなどに捉われず、社員一人ひとりが自律したキャリアを形成できるよう支援しています。また、技術革新により、求められる人材・職種が大きく変化し、今以上に需給ギャップが生じる見込みです。そのため、働く人をエキスパートにするキャリアの“最大化”と“最適化”に取り組んでいきます。

③ガバナンスへの取り組み

過半数が独立社外取締役で構成される任意の指名・報酬諮問委員会の設置、取締役会の実効性評価を外部の助言を得ながら継続的に実施する等、コーポレート・ガバナンスの強化に努めています。

事業等のリスク

1.特定事業への依存について

当社グループは、業種別に特化型での人材サービス(人材派遣、業務請負及び人材紹介)を展開しており、連結売上高における構成比は、国内Working事業における主要な3領域の人材サービス(セールスアウトソーシング領域、コールセンターアウトソーシング領域、ファクトリーアウトソーシング領域)が44.3%を占めています。今後の事業を取り巻く環境の変化等により、売上が急激に減少した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
また、国内Working事業における介護領域、建設領域や海外Working事業等、次の柱になり得る事業の成長を推進しており、主要な3領域に係る売上高の構成比は低下していくことを想定していますが、計画通りに進まず、主要な3領域への売上高の依存が低下しなかった場合は、当事業の売上高の変動が当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

2.事業の許認可について

①労働者派遣事業

国内における人材派遣事業は、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」(以下、「派遣法」という。)に基づき、厚生労働大臣の許可を受けて行っています。派遣法では、労働者派遣事業の適正な運営を確保するために、派遣元事業主として欠格事由に該当した場合や、当該許可の取消事由に該当した場合には、許可の取り消しや事業の全部又は一部を停止できる旨を定めています。また、海外における人材派遣事業は、事業展開する各国・地域それぞれの法律、規制等に従い業務を遂行しています。
万一、当社グループ各社において、重大な法令違反が発生し、許可の取り消し、又は事業の停止を命じられた場合には、当社グループの主要な事業活動全体に支障をきたすことが想定され、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
また、国内における派遣法及び関係諸法令、各国・地域における法律、規制等については、労働市場を取り巻く環境の変化等に応じて改正される可能性があります。とりわけ、国内における派遣対象業務や派遣期間制限については、適宜改正が実施されており、その改正内容によっては、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

②職業紹介事業

国内における人材紹介事業は、職業安定法に基づき、厚生労働大臣の許可を受けて行っています。職業安定法においても、派遣法と同様に、有料職業紹介事業者としての欠格事由に該当した場合や、当該許可の取消事由に該当した場合には、許可の取り消しや業務の全部又は一部の停止を命じることができる旨を定めています。また、海外における人材紹介事業は、事業展開する各国・地域の法律、規制等に従い業務を遂行しています。
万一、当社グループ各社において、重大な法令違反が発生し、許可の取り消し、又は業務の停止を命じられた場合には、当社グループの主要な事業活動全体に支障をきたすことが想定され、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
また、国内における職業安定法や各国・地域における法律、規制等については、当領域を取り巻く環境の変化等に応じて改正される可能性があります。当該法規制等の改正がされた場合、その改正内容によっては、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

3.人材の確保について

①社員

当社グループが競争上の優位性の確保、事業環境の変化への対応、及び持続的な成長を可能とするためには、優秀な人材の確保と育成が重要な経営課題です。
専門部署を設置し、様々な人事戦略の立案と実行を行っていますが、係る人材の確保又は育成が計画通りにできない場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、競合他社に重要な人材が流出した場合や、想定以上に多くの離職が生じた場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

②スタッフ

当社グループの事業活動の重要な要素のひとつにスタッフの確保があります。当社グループの継続的な成長のためには、スタッフの採用と育成が重要な課題です。そのため、当社グループでは、募集方法を多様化させるため、独自のWeb募集媒体に重点をおくことや、オンラインでの登録やカウンセリング、友人紹介キャンペーン、採用拠点の設置などの施策を実施しています。また、週5日未満や短時間勤務など主婦、シニア、留学生向けのフルタイム以外の案件獲得にも取り組んでいます。
新型コロナウイルス感染症が収束傾向にある中、雇用情勢が好転するに伴い、今後人材の流動性が加速しています。人材獲得競争の活発化により、顧客のニーズに適合したスタッフや顧客の需要量に応じたスタッフ数が確保できない場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

4.コスト圧迫リスクについて

①社会保険料

当社グループでは、従業員に加え、社会保険加入要件を満たすスタッフの社会保険への加入を徹底しています。社会保険料の保険料率や対象範囲は、社会的情勢によって適宜改定されていることから、社会保険制度の改正に伴い、会社負担金額が大幅に上昇した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

②労働契約法改正

2013年4月に改正労働契約法が施行され、施行日以降に開始した有期雇用契約が通算5年を超えて更新された場合は、労働者の申込みにより、無期雇用契約(期間の定めのない雇用契約)に転換する仕組みが導入されました。これにより、当社グループで派遣スタッフ等を無期雇用する場合、就業先が決まるまでの待機期間中の労務費等の負担が発生することが考えられます。
また、2020年4月1日より施行された同一労働同一賃金に関する法律では雇用形態にかかわらない均等・均衡待遇を確保し、不合理な待遇差がある場合、その格差是正が求められています。当社グループでは、適正水準での給与支払いに努め、派遣給与の引き上げや社会保険負担増が必要な場合には、派遣先企業への請求金額も値上げするべく交渉を行っていますが、派遣給与と派遣先企業への請求金額の上昇が必ずしも同期が取れない場合があります。このような場合、原価率が上昇するなど、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

5.競争の激化について

当社グループが属する人材サービス業界は、多数の競合会社が存在します。当社グループでは、顧客からニーズを把握した後にそれに対して対応可能なスタッフを募集し、顧客に対して的確かつ迅速な対応を行うことで、高い顧客満足度を得て競合会社との差別化を図っていますが、競争がさらに激化した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

6.将来の企業又は事業の買収について

企業又は事業の買収(M&A)は、当社グループの主要な経営戦略の一つと考えています。M&Aにおいては、成立後、統合上の業務プロセスの不具合の発生、異なる企業文化の統合による摩擦の発生に伴う業務の停滞や業績の低下、従業員の離職や内部対立の顕在化等、様々なリスクが内在しています。当社グループでは、このリスクを最小化し、M&A成立時に想定した効果を最大限に発揮させるため、詳細なデューデリジェンスに加え、M&Aを行った後の経営の統合を実行するプロセス(PMI)を適切に進めることが非常に重要であると考え、当該PMIプランを迅速かつ長期的な視点で策定しています。
しかしながら、想定通りにPMIプランが遂行できなかった場合には、買収資産の価値が毀損し、損失が発生する可能性があり、このような事象が発生した場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

7.M&Aに伴うのれんについて

M&Aに伴い発生するのれんは、帳簿価額を回収できない可能性がある場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を損失として計上する可能性があります。したがって、のれんの対象事業の将来キャッシュ・フローの見込みによっては減損損失を計上することになり、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

8.海外における事業展開について

当社グループは、事業のグローバル展開を標榜しており、現時点において、シンガポール、マレーシア、オーストラリア、アメリカ、中国、ベトナム、イギリス及びドイツに営業拠点を有しています。これら海外展開においては、各国における景気変動リスク、為替変動リスク、政府による規制、政治的な不安定さ及び資金移動の制約等に起因するカントリーリスク等が存在しています。
当社グループでは、シンガポールに統括拠点として中間持株会社をおき、当社と連携しながら、各国のカントリーリスクに留意した事業推進を行っていますが、当社グループがこのようなリスクに対処できない場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

9.個人情報の取扱い及び個人情報保護法に関するリスクについて

当社グループは、事業の特性上、派遣登録者や転職希望者等、多くの個人情報や機密情報を保有しています。
不測の事態が原因で、個人情報や機密情報が外部に漏洩し、情報主体者に被害が発生した場合には、損害賠償請求や社会的信用の失墜、EU一般データ保護規制(GDPR)による制裁金により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

10.法令遵守に関するリスクについて

①全般的なリスク

当社グループの事業活動における関連法令は、国内における各種法規制(労働者派遣法、職業安定法、労働基準法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法、健康保険法及び厚生年金保険法等)、海外における各国の各種法規制等、多岐にわたります。当社グループでは、法令遵守を重要な企業の責任と認識しており、コンプライアンス体制を強化し、法令遵守の徹底を図っています。
しかしながら、これらの対策を行っていたとしても、グループ各社の役職員やスタッフによる不正行為等を含めたコンプライアンスに関するリスク、又は社会的に信用が失墜するリスクを完全に排除できない場合があり、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

②重大な訴訟等によるリスク

当社グループは、主として人材派遣事業及び人材紹介事業等を営んでいます。その事業活動の遂行過程において、顧客、求職者、競合他社、その他の関係者等から、当社グループが提供するサービスの不備、個人情報や機密情報の漏洩又は知的財産の侵害等に関する訴訟その他の法的手続きを提起される場合や、当局等による捜査や処分等の対象となる場合があり、これらの法的手続に関連して多額の費用の支出や、事業活動に支障をきたす可能性があります。
また、係る法的手続は長期かつ多額となることがあり、結果の予測が困難となる場合があり、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

11.自然災害及び有事に関する影響について

当社グループは、日本全国及びアジア・オセアニアを中心として世界各国に営業拠点を有しており、地震、台風及び津波等の自然災害、大規模の火災や停電、新型感染症、テロ攻撃及び国際紛争等が発生した場合、当社グループの事業活動に支障が生じる可能性があり、これらを完全に回避することができず、被害が発生した場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

12.情報システムに関するリスクについて

当社グループの事業活動は、IT(コンピュータシステムやネットワーク等)に依存しており、これらITの開発、維持・管理を一部第三者に委託しています。また、格付け基準の高いデータセンターの利用や、クラウドサービスの利用等により、大規模地震等の自然災害発生時におけるシステムの可用性の確保やリモートワーク環境の構築を実現している他、外部からのサイバー攻撃や不正アクセス対策を実装し、事業継続性を確保しています。
しかしながら、万一、何らかの原因によって大規模なシステム障害が発生した場合、当社グループの事業活動に影響を及ぼす可能性があります。

13.業界を取り巻く環境の変化について

近年のテクノロジーの進化等によって、当社グループが属する人材サービス業界を取り巻く環境は、変化のスピードが早まっています。このような事業環境に適応するため、既存事業領域のサービス力・ブランド力の向上施策、コーポレートベンチャーキャピタルを活用した新たに創出されるビジネス機会を捉えるための施策等、様々な収益基盤の拡大施策を実施しています。2019年10月には、当社グループ全体の認知度及びサービス向上を目指すために、国内主要子会社のサービスプランドを「WILLOF(ウィルオブ)」に統一しました。「Chance-Making-Company」のブランディングを実施することにより、求職者への認知を図っていきます。
しかしながら、当社グループが事業環境の変化に適応できない場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

14.新株予約権等の行使による株式価値の希薄化について

当社は、当社グループの役員及び従業員に対し、新株予約権を付与しています。これらの新株予約権が権利行使された場合、当社株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。新株予約権の株式数については、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表注記 17.株式報酬」に記載の通りです。

15.資金調達について

当社グループの事業資金は、その一部を金融機関からの借入等により調達しています。これにより、景気の後退、金融市場の悪化、金利の上昇、当社グループの信用力の低下、業績の見通しの悪化等の要因により、当社グループが望む条件で適時に資金調達を行えない場合、当社グループの財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。

16.景気変動に関するリスクについて

当社グループの業績は、一般的に国内、アジア及びオセアニアを中心とする海外の経済情勢に影響されるため、当社グループは、景気に大きく影響されにくい業界(介護、建設、外国人管理受託等)への営業を強化し、景気変動が業績に与える影響の緩和を図っています。
必要に応じて、固定費の圧縮や、IT投資、新規事業投資の抑制、現預金の確保等必要な措置を講じ、機動的に経営の安定化を図ります。
しかしながら、求人需要や消費の減少など、景気停滞が長期化する場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。